Q;商標を出願したところ、商標法第4条第1項第十一号の「当該商標登録出願の日前の商標登録出願に係る他人の登録商標又はこれに類似する商標であつて、その商標登録に係る指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について使用をするもの」と認定され、拒絶理由通知を受けました。
この場合、非類似であるとする意見書を提出しても通りそうもありませんし、手続補正書を提出して重複しています指定商品若しくは指定役務の削除も考えられますが、そうしたくありませんし、商標権者から商標権を移転してもらうことも出来そうにありませんし、不使用取消審判の請求により商標権を消滅させ、当該商標法第4条第1項第十一号の規定に該当しないようにすることも難しそうですし、出願商標を変更することは認められていませんし、当該商標を変更して新たに出願し直すことも考えられますが、
是非、類似するとされました商標を登録したいのですが、その対策はありますか?
A;アサインメントバックを実施するという対策があります。
上記の他人の登録商標を取得しています商標権者(A)にお願いして、一旦、その名義(A)を、自分の名義(B)に変更してもらい、「他人の登録商標に類似する商標」の要件を外し、上記の拒絶理由を解消して、その出願に付きまして登録査定謄本が送られてきましたら、登録料の納付をして、登録するという手があります。この場合、再び、商標権者の名義を、自分の名義(B)から元の商標権者名義(A)に戻してもらいます。
アサインメントバック{Assignment(譲渡)back(戻す)}
Q;自分の商標の出願人名義(B)を、一旦商標権者(A)に変更し、登録査定謄本が送られてきたら、再び、出願人名義を、商標権者の名義(A)から自分の名義(B)に戻すということは出来ないのですか?
A;それも可能です。同様のアサインメントバック(アサインバックとも称される。再譲渡)に属します。
Q;上記の場合、登録査定謄本が送られてきて、登録料の納付をする前に、出願人名義を、商標権者の名義(A)から自分の名義(B)に戻しても、再び、拒絶理由通知を受けませんか?
A;第4条第1項十一号の規定に該当するか否かの判断時期は、査定時とされていますので、再び、拒絶理由通知を受けないと思われます。
商標審査基準→
http://www.jpo.go.jp/shiryou/kijun/kijun2/pdf/syouhyou_kijun/29_4-3.pdf
Q;私は、最近、ある化学物質が除草剤として有効であることを見つけました。
このような物質の用途について特許を取得することができますか?
A;用途発明に付きましては、特許を取得できる可能性があります。用途についての上記のような事実を見いだしたことは、特許法上定義しています発明には該当せず、単なる発見にしか過ぎないとする意見もありますが、我が国などでは、発明性を肯定しています。
Q;用途発明は、出願に際し、明細書でどのような発明の形態にすればよいのですか?
A;物の発明又は方法の発明で表現することができます。物の発明では、例えば、当該化学物質を有効成分とする除草剤のような形です。又、方法の発明では、当該化学物質を散布する除草方法のような形です。
Q;用途発明について特許を取得しようとする場合に注意すべき点は何ですか?
A;用途が、産業上利用することができる種類であることが必要です。用途が、例えば、人体の診断のような用途にしか利用することができないときには、その産業上利用性に疑問が生じます。
又、用途としての作用効果があることが必要で、例えば、除草効果が実際無い等、作用効果に疑問を生じさせないことが必要です。
更に、その用途に予測可能性がないことが必要です。例えば、前記例では、その化学物質に除草効果があることが当然予測されるような場合には疑問が生じます。
Q;用途としての作用効果を示すには、実際上の作用効果を示すデ-タの提示が必要かと思いますが、そのデ-タが不足するような場合には、どのような扱いを受けますか?
A;発明未完成の取扱いを受ける場合があります。実施可能性要件を具備しないとされる場合もあります。
Q;発明未完成の取扱いを受けた場合、出願後にデ-タを追加補正できますか?
A;デ-タを追加補正することは、出願後に未完成発明を完成させることになりますので、できません。
Q;実施可能性要件を具備しないとされた場合には、出願後にデ-タを補正できますか?
A;特許法36条の実施可能性要件を具備しないと認定された時には、デ-タを補正することができる場合があります。
Q;新規物質と用途発明との関係は?
A;新規物質について出来るだけその用途を記載しておく必要があります。第三者がその新規物質の用途を見出した時に、その物質特許自体が既に公開されていても、特許を取得できる可能性があります。
この場合、公開後に明細書中に記載してある用途については、新規物質の権利者自身も用途発明の特許を取得できませんので、新規物質の公開前に用途発明の特許を出願しておく必要があります。
Q;新規物質についての特許と用途発明についての特許が成立した場合、両特許の関係は?
A;用途発明についての特許は、新規物質についての特許権の制限を受け、実施に際しては、先願の新規物質についての特許権者の承諾を要します。一方、先願の新規物質についての特許権者は、その用途における実施には、用途発明についての特許権者の承諾を要します。その解消に、実施権についてのクロスライセンスが結ばれたりします。最も、特許法72条は、後願特許発明が先願特許発明を利用する場合を規定しているだけであって、この逆については規定されていません。その結果、先願の新規物質についての特許権者は、その用途における実施には、用途発明についての特許権者の承諾を要せずに、自由に用い得るとの解釈も成立ち得ます。
第七十二条 特許権者、専用実施権者又は通常実施権者は、その特許発明がその特許出願の日前の出願に係る他人の特許発明、登録実用新案若しくは登録意匠若しくはこれに類似する意匠を利用するものであるとき、又はその特許権がその特許出願の日前の出願に係る他人の意匠権若しくは商標権と抵触するときは、業としてその特許発明の実施をすることができない。
Q;用途発明についての各国の取扱いは同じですか?
A;米国では、用途発明は方法の発明として保護します。用途発明について外国へ出願する時には、注意が必要です。日本では、医薬用途について、方法の記載をすると、人間の診断方法などになってしまい、産業上利用可能性が否定されたりします。
Q;用途発明についての同一性の判断は?
A;特許庁の用途発明についての同一性の判断例(出願審査請求基準)に次のものがあります。
例6:「成分Aを有効成分とする肌のシワ防止用化粧料」
「成分Aを有効成分とする肌の保湿用化粧料」が、角質層を軟化させ肌への水分吸収を促進するとの整肌についての属性に基づくものであり、一方、「成分Aを有効成分とする肌のシワ防止用化粧料」が、体内物質Xの生成を促進するとの肌の改善についての未知の属性に基づくものであって、両者が表現上の用途限定の点で相違するとしても、両者がともに皮膚に外用するスキンケア化粧料として用いられるものであり、また、保湿効果を有する化粧料は、保湿によって肌のシワ等を改善して肌状態を整えるものであって、肌のシワ防止のためにも使用されることが、当該分野における常識である場合には、両者の用途を区別することができるとはいえない。したがって、両者に用途限定以外の点で差異がなければ、後者は前者により新規性が否定される。
上記のように、用途としての適用範囲が実質的に区別し得ない2以上の用途は、これを同一と判断されます。
出願審査請求基準
→http://www.jpo.go.jp/tetuzuki/t_tokkyo/shinsa/pdf/sinkisei_sinposei/sinki_sinpo01.pdf
Q:新規性喪失の例外とは?
A:特許法上、本来は、新規性と称して、特許出願前に、日本国内又は外国において公然知られた発明、日本国内又は外国において公然実施をされた発明及び日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた発明は特許を受けることができません(29条)。即ち、そうした状態になった発明は、新規性を喪失したものとされ、特許を受けることができません。しかしながら、研究者は自らの成果を刊行物へ論文発表しますし、企業は展示会で新製品の展示をしてその評価を得る等自らの発明を公開せざるを得ない場合等があり、その発明について特許出願をしても一切特許を受けることができないとすることは、発明者にとって酷な場合もあり、また、産業の発達への寄与という特許法の趣旨にもそぐいません。そこで、特許法上、特定の条件の下で発明を公開した後であっても、先の公開によってその発明の新規性を喪失しないものとして取扱っています。(30条)。これを称して、新規性喪失の例外と言っています。
Q:新規性喪失の例外の適用を受けられるのは、次の場合と聞いていましたが、その通りですか?
特許を受ける権利を有する者の意に反して新規性を喪失した発明(特許法第30条第2 項)であるか、
特許を受ける権利を有する者自らが、試験を行い、刊行物に発表し、電気通信回線を通じて発表し、特許庁長官が指定する学術団体が開催する研究集会において文書をもって発表し、又は特定の博覧会に出品することにより新規性を喪失した発明(同条第1項及び第3 項)であること。
A:確かに、従来は、新規性喪失の例外の適用を受けられるのは、上記の場合に限定されていました。
しかし、これでは、特許庁長官の指定の有無によって適用が左右されること(長官の指定を受けるには、申請が必要で,申請がなければ新規性喪失の例外規定の適用が受けられません。)、パンフレットなどを通じて発表された発明は適用対象となる一方で,自社製品そのものを販売して公になった発明は適用対象にならないなど,公表の意図は同じであっても、その公表の違い等によって適用対象になる場合とならない場合があり,不均衡が生じます。
そこで、これらの理由等から、平成23 年に特許法30条が改正され、特許を受ける権利を有する者の行為に起因して、上記のように、新規性を喪失しても、例外適用を受け得るように改正が行われました。従いまして、学術団体は、特許庁長官の指定が必要なく、特許庁長官の指定のない学術団体での発表でも適用を受けることができますし、名目は、学術団体や博覧会に限らず、展示会などでも適用を受けることができます。「行為に起因して」となりましたので、諸種の公開態様によって新規性を失った発明であっても、網羅的に救済されるようになりました。
Q:新規性喪失の例外規定(特許法第30 条第2 項)の適用を受けるための手続的要件?
A: 特許法第30 条第2 項の適用を受けるための手続的要件は、次の通りです。
(a)権利者の行為に起因して公開された発明の公開日から6月以内に特許出願をすること(特許法第30条第2項)。
(b)特許出願時に発明の新規性喪失の例外の適用を受けようとする旨を記載した書面を提出すること(特許法第30条第3項)。
(c)特許出願の日から30 日以内に,発明の新規性喪失の例外規定の適用要件を満たすことを証明する書面を提出すること(特許法第30条第3項)。
Q:上記の特許法第30条第2項の適用を受ける際の提出書面の内、(b)の発明の新規性喪失の例外規定の適用を受けようとする旨を記載した書面は,特許出願後に、上記(c)の書面と共に提出することができますか?
A:いいえ、当該(b)の発明の新規性喪失の例外規定の適用を受けようとする旨を記載した書面は,特許出願時に提出しなければ、新規性喪失の例外の適用を受けることはできません。
Q:当該(b)の発明の新規性喪失の例外規定の適用を受けようとする旨を記載した書面については,必ず、書面を提出しなければ、いけないのですか? 新規性喪失の例外の適用を受ける出願は、オンライン出願はできないということですか?
A:いいえ、出願時の願書にその旨記載すれば省略することができます(特許法施行規則第27条の4)。
オンライン出願により手続をする場合には,必ず願書にその旨を記載しなければならないと規定されています(特許法施行規則第12 条)。
Q:願書には、その旨の記載をどのように記載すればよいのですか・
A:願書の【書類名】、【整理番号】の次に【特記事項】の項を設け、そこに、特許法第30条第2項の規定の適用を受けようとする特許出願と記載します。 特許法第30条第2項と記載する点に留意する必要があります。
Q:上記(c)の特許出願の日から30 日以内に,発明の新規性喪失の例外規定の適用要件を満たすことを証明する書面の提出はどのようにすればよいのですか?
A:「発明の新規性喪失の例外の規定の適用を受けるための証明書」は,「新規性の喪失の例外証明書提出書」(特許施行規則様式第34)に添付して,特許出願の日から30日以内に提出します。
「新規性の喪失の例外証明書提出書」と「発明の新規性喪失の例外の規定の適用を受けるための証明書」とは、同時に提出する必要があります。
Q:上記「新規性の喪失の例外証明書提出書」は、どのように作成すればよいのですか?
A:特許施行規則様式第34を参照して下さい。次のように作成します。
【書類名】 新規性の喪失の例外証明書提出書
【提出日】 平成 年 月 日
【あて先】 特許庁長官 殿
【事件の表示】
【出願番号】
【提出者】
【識別番号】
【住所又は居所】
【氏名又は名称】
【代理人】
【識別番号】
【住所又は居所】
【氏名又は名称】
【刊行物等】・・・・・・
【提出物件の目録】
【物件名】 発明の新規性の喪失の例外の規定の適用を受けるための証明書 1
【物件名】 ( )
【援用の表示】特願○○○○-○○○○○○
上記のように、「【刊行物等】」の欄を設け、この「【刊行物等】」の欄には、特許法第30条第2項の適用を受けようとする場合において、発明が特許法第29条第1項各号のいずれかに該当するに至った事由に関する情報(例えば、試験を行ったときは、試験を行った日、場所等、刊行物に発表したときは、発行者名、刊行物名、巻数、号数、発行年月日等、電気通信回線を通じて発表したときは、掲載年月日、掲載アドレス等、集会において発表したときは、集会名、開催日等、博覧会
に出品したときは、博覧会名、開催日等)を記載します。
注意!
公開の事由が複数ある場合は【刊行物等】の欄には、公開の内容ごとに、行を改めて記載します。また、2以上の証明書を添付するときは、【提出物件の目録】の欄に複数の【物件名】の欄を設け、証明書名を記載します。
この場合、証明書の提出を省略するときは、「【提出物件の目録】」の欄に「【物件名】」の欄を設けて、当該証明書の書類名を記載し、その次に「【援用の表示】」の欄を設けて、特許法施行規則10条第1項の規定(同時に二以上の手続をする場合)によるときは援用される当該証明書が提出される手続に係る事件の表示(特許権に係るものにあっては、特許番号、書類名及びその提出日)を、同条第2項の規定によるとき(他の事件について既に特許庁に証明書を提出している場合)は援用される当該証明書が提出された手続に係る事件の表示(特許権に係るものにあっては、特許番号、書類名及びその提出日)を記載します。(以下省略)
Q:発明の新規性の喪失の例外の規定の適用を受けるための証明書は、どんな事項を証明することになるのですか?
A:以下の二つの要件が満たされていることを証明することになります。
要件1:発明の公開日から6月以内に特許出願をしたこと。
要件2:権利者の行為に起因して発明が公開され、権利者が特許出願をしたこと(特許法第30条第1項及び第3項には、特許を受ける権利を有する者と規定されており、当該特許を受ける権利を有する者、通常、発明者と、公開者との関係が問題とされます。)。
Q:発明の新規性の喪失の例外の規定の適用を受けるための証明書は、刊行物なりを添付せずに、出願人自ら作成した証明書でもよいのですか?
A:はい。「証明する書面」として、一定の書式に則った出願人自らによる証明書が適正に作成され、特許出願の日から30日以内に提出されていれば、証明事項について一定の証明力があるものと認められます。
改正前においては,「証明する書面」として「書面A」(出願人によって作成される証明書),「書面B」(書面Aで記載した公開の事実に関する客観的証拠資料や第三者による証明書)を適式に提出してはじめて,証明事項について一定の証明力があるとされていました。しかしながら,本改正により,発明の新規性喪失の例外規定の適用対象となる発明の公開態様が拡大されたことを契機に「証明する書面」の考え方について見直しが行われ,「証明する書面」として「書面A」(出願人によって作成される証明書)が作成され,適式に提出されていれば,証明事項について一定の証明力があるものと認められることとなりました。
このように,「証明する書面」の考え方が緩和されたのは,①出願人自らによる証明書だけでも,証明すべき事項が詳細に記載されていれば一定の証明力が認められる場合が多いこと,②特許出願の日から30 日以内に提出しなければならない「証明する書面」について,その作成負担を軽減したとしても,第三者が不測の不利益を被るとはいえないこと等の理由に基づきます。もっとも,新規性喪失の例外の適用を受けることができる発明であることに疑義を抱かせる証拠が発見された場合には,この発明を根拠として出願に係る発明に対して拒絶理由が生じる可能性があります。
Q:発明の新規性の喪失の例外の規定の適用を受けるための証明書は、どのように作成すればよいのですか?
A:発明の新規性の喪失の例外の規定の適用を受けるための証明書は、
下記の要領で記載しました「公開の事実」及び「特許を受ける権利の承継等の事実」の欄を設け、
作成します。
◇「公開の事実」欄の記載要領
(1)公開日
(2)公開場所
(3)公開者
(4)公開された発明の内容
◇「特許を受ける権利の承継等の事実」欄の記載要領
(1)公開された発明の発明者
(2)発明の公開の原因となる行為時の特許を受ける権利を有する者(行為時の権利者)
(3)特許出願人(願書に記載された者)
(4)公開者
(5)特許を受ける権利の承継
(6)行為時の権利者と公開者との関係等について
(行為時の権利者の行為に起因して、公開者が公開したこと等を記載)
- 発明の公開日とは、特許法29条第1項各号のいずれかに該当するに至った日、すなわち、不特定の者に秘密でないものとしてその内容が知られた日(公然知られた日)、発明の内容が公然知られる状況又は公然知られるおそれのある状況でその発明を実施した日(公然実施をされた日)、発明が記載された刊行物が頒布された日、又は、発明が電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった日のうちの、最も早い日を意味します(審査基準第II部第2章の「1.新規性」も参考にしてください。)。
- (公開者)は、実際に公開を行った者を意味しますが、実際に公開を行った者を特定することが困難な場合は、③(公開者)として公開行為に責任を有する者を記載することができます(例えば、企業が多数のアルバイトを雇用して発明の試供品を路上配布させた場合には、実際に発明の公開行為をした者を特定することが困難であるため、アルバイトを雇用した企業を③(公開者)として記載することができます。)。
Q:『公開の事実』欄の記載要領について、 主な発明公開態様についての記載要領は?
(1)試験の実施により公開された場合
①試験日
②試験場所
③試験を行った者
④試験内容(証明する対象を特定し得る程度に記載)
(2)刊行物(書籍、雑誌、予稿集等)等への発表により公開された場合
①発行日
②刊行物(刊行物名、巻数、号数、該当ページ、発行所/発行元等)
③公開者
④公開された発明の内容(証明する対象を特定し得る程度に記載)
(留意事項)
- 刊行物とは、公衆に対し頒布により公開することを目的として複製された、文書、図面その他これに類する情報伝達媒体を指し、頒布された場所や言語は問いません。
ウェブサイトの掲載日(発明をウェブサイトに掲載した日)
ウェブサイトのアドレス(URL)
公開者
公開された発明の内容(証明する対象を特定し得る程度に記載)
(4)集会(学会、セミナー、投資家や顧客向けの説明会等)での発表により公開された場合
開催日(発明を発表した日)
集会名、開催場所
公開者
公開された発明の内容(証明する対象を特定し得る程度に記載)
(5)展示(展示会、見本市、博覧会等)により公開された場合
展示日
展示会名、開催場所
公開者
出品内容(証明する対象を特定し得る程度に記載)
(6) 販売、配布により公開された場合
販売日又は配布日
販売場所又は配布場所
公開者
販売又は配布した物の内容(証明する対象を特定し得る程度に記載)
(7)記者会見・テレビやラジオの生放送番組への出演等により公開された場合
公開日(放送日、会見日等)
放送番組、会見場所等
公開者
公開された発明の内容(証明する対象を特定し得る程度に記載)
Q:上記の販売により公開された場合を例にとってのその詳細は?
A:販売により発明の新規性を喪失した場合の証明書の具体的な記載例は、次の通りです。
発明の新規性の喪失の例外の規定の適用を受けるための証明書
1.公開の事実
① 販売日 平成25年○ 月○日
② 販売をした場所 A株式会社(東京都○○区○○町○ 丁目○番3○号)
③ 公開者 B株式会社
④ 販売した物の内容 ・・・
2.特許を受ける権利の承継等の事実
① 公開された発明の発明者C (埼玉県○○市○○町1 丁目2 番3 号)
② 発明の公開の原因となる行為時の特許を受ける権利を有する者
株式会社B(東京都△区△町○△丁目△番△号)
③ 特許出願人 株式会社B
④ 公開者 株式会社B
⑤ 特許を受ける権利の承継について
⑥ 行為時の権利者と公開者の関係等について
上記事項が事実に相違ないことを証明します。
平成25年○ 月○日
株式会社B 代表者D (印)
上記は、発明者Cから特許出願人の株式会社Bが特許を受ける権利を承継していて、当該特許を受ける権利を承継している株式会社Bが、A株式会社に対してA株式会社の場所で物を販売し、発明の新規性を喪失した場合であります。
⑤ 特許を受ける権利の承継についての項には、当該特許を受ける権利の承継があったことを記載します。
⑥ 行為時の権利者と公開者の関係等についての項には、公開の事実に記載の公開行為により公開された発明が発明者Cから,発明の公開の原因となる行為時の特許を受ける権利を有する者Bに譲渡され,その者Bが特許出願を行った旨等を記載します。
行為時の権利者の行為に起因して,公開者が公開したこと等を記載する。②発明の公開の原因となる行為時の特許を受ける権利を有する者と④公開者が完全に一致している場合には記載を省略で
きます。上記の場合、特許を受ける権利を有する者Bと公開者Bとが、完全に一致しているので、記載を省略できます。
出願人(共同出願の場合には出願人全員)による記名押印又は署名(サイン)をしてください。
出願人による証明が必要ですので、出願人以外の発明者・公開者・代理人による記名押印又は署名(サイン)では認められません。
出願人名の印(法人の場合は、その法人を代表する者の名前の印でも可)を押してください。なお、特許庁に届出がなされている印である必要はありません。
記名押印は「識別ラベル」を貼付することで代用することはできません。
共同出願の場合の「証明する書面」は、同一内容で各出願人が個別に記名押印又は署名(サイン)した
別々の書面として提出しても構いません。
書面は一枚とは限らず、複数枚にわたっても構いません。 (複数枚にわたる場合、割印は不要です。)
Q:文書、図面、音声や動画等を収録したCD-ROMやUSBメモリー等を通じて公開した場合は?
A:文書、図面、音声や動画等を収録したCD-ROMやUSBメモリー等を通じて公開した場合には、刊行物に発表した場合と同様の記載要領で「証明する書面」を作成することができます。
刊行物がその奥付に記載された発行日より前に公衆に頒布され、かつその頒布された日を出願人が知っている場合には、その頒布日を①の欄に記載するとともに、奥付に記載された発行日を付記してください(※)。なお、その場合には頒布日から6月以内に特許出願を行う必要があります。
- 記載例『①頒布日 平成23年10月23日(発行日 平成23年10月31日)』
Q:「公開された発明が複数存在する場合」
A:「公開された発明が複数存在する場合」について、例えば,発明を複数の異なる雑誌に掲載した場合など,特許を受ける権利を有する者の行為に起因して公開された発明が複数存在する場合には,それぞれの公開された発明について新規性喪失の例外の規定の適用を受けるための手続(以下,単に「手続」という。)をしなければならないのが原則であります。
ただし,上記複数存在する発明のうち,手続を行った発明の公開以降に公開された発明であって,以下の1.または2.のいずれかの条件を満たすものについては,「証明する書面」の提出を省略することが可能となります。
【条件】
1.手続を行った発明と同一であるか又は同一とみなすことができ,かつ,手続を行った発明の公開
行為と密接に関連する公開行為によって公開された発明
2.手続を行った発明と同一であるか又は同一とみなすことができ,かつ,権利者又は権利者が公開
を依頼した者のいずれでもない者によって公開された発明
Q:「証明する書面」が外国語で書かれている場合は、特許出願の日から30日以内に、「証明する書面」に翻訳文を添付して提出?
A:「証明する書面」が外国語で書かれている場合は、特許出願の日から30日以内に、「証明する書面」に翻訳文を添付して提出してください(特許法施行規則第2条第2項)。
Q:特許を受ける権利を有する者の意に反して公開された場合でも、証明書類は必要ですか?
A:特許を受ける権利を有する者の意に反して公開された場合には、証明書類は必要ありません。
Q:特許公報への掲載でも、適用を受けることができます?
A:改正前の30 条では特許公報への掲載が「刊行物に発表」に該当するかが明示されていなかったものの,最判平元年11 月10 日民集43巻10 号1116 頁〔環式アミン事件の上告〕により,特許公報への掲載が,改正前30 条1 項にいう「刊行物に発表」することには該当しないことが判例上確定していました。
特許公報等(特許公報、実用新案登録公報、意匠登録公報、商標登録公報等)に掲載された発明は発明の新規性喪失の例外規定の適用を受けることはできません。
内外国特許庁・国際機関により発行された公報に掲載された発明は、特許法第30条第2項で適用対象から除外されています。
(発明の新規性の喪失の例外)
第三十条 2 特許を受ける権利を有する者の行為に起因して第二十九条第一項各号のいずれかに該当するに至つた発明(発明、実用新案、意匠又は商標に関する公報に掲載されたことにより同項各号のいずれかに該当するに至つたものを除く。)も、その該当するに至つた日から六月以内にその者がした特許出願に係る発明についての同条第一項及び第二項の規定の適用については、前項と同様とする。
Q:新規性喪失の例外規定の適用と先願との関係は?
A:新規性等を喪失した日まで出願日の遡及を認めるものでなく,この点は改正後においても何ら変わりはありません。例えば,甲が出願前に発明に係る製品を販売し,この発明について新規性喪失の例外規定の適用を受けたとしても,乙がこの発明と同じ発明を独自に発明し,甲よりも先に出願,あるいはインターネット等を通じて公表していた場合には,これを理由に甲の出願は特許を受けることができません。新規性喪失の例外規定の適用を受けるとしても、可能な限り早期に出願することが肝要となります。
Q:新規性喪失の例外規定の適用時期?
A:改正された新規性喪失の例外規定は,平成24 年4月1日以降の出願について適用されます。
Q:一の公開について複数の特許出願で発明の新規性喪失の例外規定の適用を受けることはできますか?
A:受けることができます。
一の公開について、複数の特許出願で発明の新規性喪失の例外規定の適用を申請することができます。その際、「証明する書面」の内容が同一であるときは、いずれかの特許出願に際してその「証明する書面」を提出すれば、他の特許出願に際しては、その提出した旨を申し出ることにより、その「証明する書面」の援用が認められ提出を省略することができます。これは、同時に複数の特許出願を行う場合でも、複数の日に渡って複数の特許出願を行う場合でも認められます(特許法施行規則第10条第1項及び第2項、特許法施行規則様式第4の備考4参照)。
Q:発明の公開の日は証明できないのですが、公開の月なら証明できる場合は、いつから6月以内に特許出願をすれば、発明の新規性喪失の例外規定の適用を受けることができますか?
A:公開の日はその公開月の初日と推定されますので、公開月の初日から6月以内に特許出願を行ってください。
Q:発明が複数日にわたって放送されたテレビ番組で公開されたものの、いずれの日に放送されたか不明である場合は、いつから6月以内に特許出願をすれば、発明の新規性喪失の例外規定の適用を受けることができますか?
A:発明の公開の日は番組の放送初日と推定されますので、その初日から6月以内に特許出願を行ってください。
Q:願書の特記事項の補正により、発明の新規性喪失の例外規定の適用を受けようとする旨の記載を追加することができますか?
A:願書の特記事項の補正により、発明の新規性喪失の例外規定の適用を受けようとする旨の記載を追加することはできません。
なお、願書の特記事項に「第2項」と記載すべきところを誤って「第1項」又は「第3項」と記載したような場合は、誤記であることが明らかですので、その項の番号を補正することができます
Q:意に反して公開されたといえる具体例には何がありますか?
A:特許を受ける権利を有する者(権利者)と公開者との間に秘密保持に関する契約があったにもかかわらず公開者が公開した場合、公開者の脅迫又はスパイ行為等によって公開された場合、ある日時までは公開しない旨約束していたにもかかわらず、その日時前に公開された場合等が挙げられます。
Q:「意に反して」公開された発明である旨を意見書や上申書等を通じて説明しようと考えています。何を記載したらよいでしょうか?
A:(1)発明が公開された日から6月以内に特許出願をしていること、及び、(2)特許を受ける権利を有する者(権利者)の意に反して発明が公開されたことについて証明してください。
上記の(2)の証明については、例えば、権利者と公開者との間に秘密保持に関する契約があったにもかかわらず公開者が公開したという場合には、契約書のコピーを提出するなどして、権利者と公開者との間にその発明を秘密にするという契約があったことを証明することが考えられます。
Q:海外への出願と新規性喪失の例外規定の適用との関係は?
A:日本の特許法の新規性喪失の例外規定が適用される発明を公知・公用にする行為が,国によっては救済されない点に留意する必要があります。すなわち,諸外国の法において救済の対象となる新規性喪失行為は,必ずしも日本の特許法の新規性喪失の例外規定のそれと一致するものではありません。例えば,欧州特許条約(EPC)は,権利濫用の場合,特定の国際博覧会における展示による公知の場合にのみ新規性が喪失しないと規定していることから,日本の特許法では新規性喪失の例外規定の適用を受けることができる出願であっても,欧州特許条約(EPC)では,新規性の要件を満たさないと判断されることがあります。
また,新規性喪失の例外規定や所謂グレ-スピリオド(発明公開後1年の出願猶予期間)に対応する規定自体をもたない国も幾つか存在する点にも留意する必要があります。
したがって,外国に出願する予定がある場合,あるいは外国に出願する可能性がある場合には,とりわけ自ら発明を公知・公用にすることは避けるべきであります。
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